究極の完全犯罪 その25

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 俺は3000円を渡すと、ちょっと不満そうな顔をしたけれど、目が笑っていた。
「さっきの回収の兄ちゃんは、北本や塚本とは全然関係ないのやで。もう一人の兄ちゃんと、それに事務所にいる可愛いお姉ちゃんの三人でやってるんやけど、市のリサイクル業者として表彰されてるくらいや」
「どうして北本達は空き缶回収を辞めたのかな。儲かる商売と言ってたんだよ」
「塚本と、どこかの副事務長、そうH病院の副事務長の猟奇的な死に方が市議会で問題になったんや。塚本が空き缶回収をしていたのはみんな知っていた上に、とかく噂のあるH病院の副事務長も猟奇的な死に方をしたんやから、週刊誌の格好のネタになったわけや。そんなこんなで雑誌の記者は死んだ二人が疾風に関係しているこを暴いたんよ。市としても大きな問題やで。空き缶回収は市のリサイクル事業でもあるんやから、変な会社には任せられないわけやね。小さな会社やけど、ちゃんと回収をしているさっきのトラックの会社に任されたわけや。ガタガタのおんぼろトラックやけど、回収品を置いておく場所は、ちゃんと認可された立派なところやで」
「それじゃ、あの北本はもう関係ないみたいだね。けれどもワルのくせに、すんなり引くような玉じゃないと思うんだけど」
「さすが探偵屋やね。兄ちゃんは」
 もう話したら止まらないお姉さんだ。自分の知っている情報から週刊誌の内容まで、男は全く関心を示さないことまで楽しく話してくれる。
「噂ではあいつはどこかの団体に所属したらしいんや。わかる?兄ちゃん」
「分かるよ。それくらい」
「団体に入っても、昔のようなことはあらへんで。加盟したお礼を払わなあかん。つまり毎月の上納金がいるんや。両手だって。自分一人だけでや。分かる?」
「分からない」
「一月100万収めなければならないんや。H病院の理事長がそのために雲隠れしたっていう噂や。もううちらの仕事になんかかまってられないみたいやで」
「それじゃ、疾風はどうなったんだい」
「そんなことは知らん」
 団体っていうのは社会秩序を乱す指定○○○という組織のことだ。そんなところに属してサラリーマンなんか続けられない。ということは、俺が勤めていた会社も辞めたということか。いや、違う。女子社員が昨日話していたことと話が逆になっている。
 医療関係とつるんで労災患者をでっち上げたり、その弱味に付け込んで若者を集めて疾風を新しいアウトローの世界に伸し上げたのが殺された副事務長と北本だった。
 その副事務長と塚本を葬り、実権を握ったかに見えた北本だが、そのまま疾風を維持できなくなり別組織の一員になってしまった。そんな柔な北本だろうか。ひょっとしたら副事務長は殺されてはいないのかも知れない。H病院と俺の勤めていた会社を喰いものにする方策が整ったのだろう。どう見ても北本と副事務長とではワルの格が違う。何かからくりがありそうだ。
 お姉さんの言う上納金の100万というのは週刊誌からの受け売りだ。実際は疾風が衰退したような形をとって警察の目を逃れている可能性が高い。そして俺が辞めた会社の骨の髄までしゃぶりつくす。それが副事務長と北本だと俺は思う。
「ありがとう、お姉さん」
「もう調査は終了か。疾風のことを詳しく知りたいなら、さっきの兄ちゃんとこへ行けばわかると思う。もともと族あがりやから。ほんなら頑張りや」
 お姉さんは、情報が欲しければいつでもおいでや、と言って手を振った。
 俺が回収業の兄ちゃんのところへは行かずにスキンヘッドに会うためにランニングをすることにした。お姉さんよりも空き缶回収歴は古いし、コネクションは広そうなスキンヘッドだからだ。
 二時間ほどスキンヘッドのいそうな場所を探したが、どこにもいないどころかブルーシートのテントさえ無く、きれいな遊歩道になっていた。ホームレスもますます住みにくくなっているのだろう。
 仕方なしにベンチに座り、ボトルの水で喉を潤していたら、目蓋の横に傷がある男が近づいてきた。
 ニヤッと笑い。そのまま去って行く。俺は何も言わずついて行くことにした。この前雇った三人のホームレスの一人だ。スキンヘッドの所へ連れてくれるのだろう。
 公園の横の住宅街に入った。生垣で囲まれた家が続いている。こんなところをホームレスと一緒に歩いていたら警察に通報されるかも知れない。何も悪いことはしていないが、あまり関係したくない部類だ。

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