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zoom RSS 隠し神 その3

<<   作成日時 : 2017/06/06 08:51   >>

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 数日が経過した。続け様に出てきた隠し神はあれから一度も現れなかった。どうしたのだろう。まさか病気をして出てこられないなんてこともあるまい。鬚爺さんは神なのだから病気になんてなるはずがないと思う。万が一病気になっていても助けることなんて出来ない。横になり目を瞑れば出てくるだけだから、住んでいる所も分からない。分かったとしても医者に連れて行くことなんてできるはずがない。保険に入っているはずもない。
 あ、またヘンなことを考えてしまった。現れなければ現れないで、隠し神のことを心配している自分が滑稽だ。仕事以外はいつも独りぼっちで寂しがりやの俺だからか。他人を信じてもすぐに裏切られることを何度も経験しているからだろうか。行きつけのスナックで馬鹿騒ぎをしていても、どこか醒めている自分がいる。カウンターで横に座った客は俺のことをどう思っているのだろうか。親しいフリをしているだけで、本当はバカにしているのではないかと時々思うこともある。あれって、疑心暗鬼に陥る一歩手前で、もう崖っぷちに立たされているのが俺なのだ。
 隠し神が出てくる一週間ほど前に飲んだ時だった。何度か一緒にウォーキングをした奴が顔を見せた。阿呆な話をしたりカラオケで楽しんだ後、一緒に帰ることになった。俺は店を出てすぐにタバコに火を付けた。奴が俺に『道で吸ったらダメ』と言った。俺は無視して吸いながら歩いた。途中で『こっちを歩こう』と言うので俺は従った。もうすぐ大通りに出るので、俺はタバコを踏んづけた。それを見て奴は無言のまま足早に駅まで行くのだった。俺はいつもの帰り道だったら灰皿のある所で消すのだが、違うコースだったから仕方なく足で踏みつぶしたまでだ。そのまま捨てたことは悪いが、奴は今までポイ捨てをしたことはないのか。大目にみろとは言わないが、一緒に帰ろうと言ったのだから、無視することはないだろう。同じ最終電車ではあるが、結局別々の車輌に乗ったから、もちろん話すこともなかった。
 家にいても一人。外でも一人。人恋しい俺のことを隠し神は知っているみたいだ。今度出現したら、ちょっと長めに話したら少しは気も紛れるし面白いかも、と思った瞬間、部屋が揺れた。地震だ。かなり大きい。俺は咄嗟に本箱とパソコンのモニターを手で押さえて踏ん張った。倒れたら仕事が出来なくなると思った。家が崩れてその下敷になり、死ぬかもしれないなんてことは毛の先ほども思わなかった。揺れはまだおさまらない。外に目を向けた。どこも揺れていない。台所の食器棚にも異常はない。これだけ揺れたら床に落ちて割れているはずだが、そんな痕跡も見当たらない。この部屋だけがまだ揺れている。
「よお、ダメ男。君のご要望に応えてお出ましじゃ。喜べ」
 鬚爺さんが俺の椅子に座っている。もう揺れてない。鬚爺さんは俺の踏ん張っている格好を見て高笑いをした。さては鬚爺さんがこの部屋だけを揺らしたのだな。俺はちょっと爺さんを睨んだ。
「そう恐い顔をするな。ダメ男の夢に出る分にはすんなりいくが、現実の世界に出るとなるとなかなか難しいのじゃ。ダメ男が儂を認めてくれたから元締に許しをいただき、やっと出ることができたのじゃ。喜べ」

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