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zoom RSS まんぷく酒場 ーみんな去ってしまったー その2

<<   作成日時 : 2017/06/14 09:00   >>

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昨日の続きです。

本日は季節らしく、また花菖蒲の写真を小さく載せることにしました。
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まんぷく酒場 ーみんな去ってしまったー その2
 春子さんのお別れ会参加に一番に手を挙げたものの、参加するのを止めようかなと思う出来事があった。参加すると言ってから古くから知っている十川が誘っでくれた。まんぷくに行く前に食事をして、そこで七時半ごろに店へ行くと予約を入れた。もしも入れなかったら無駄足を踏むことになるからだ。
 店に入ると先客が四人いた。名前は忘れたが、顔は知っている。六人で、とりとめもなくグダグダと話していた。そんなのが一時間くらい続いたころドアが開いた。また知っている美人お姉さん(実はお婆さん)が来た。その後すぐに大きな声でしゃべるオッサンが入ってきて腰かけるやいなやカラオケで唄い出した。一曲終わるとまた自分で入れる。矢継ぎ早に三曲だ。ちょっとムッとしたので、こっちも唄ってやれ、と思い勝手に入れた。するとこのオッサン、タバコを吹かしだした。煙がこっちに漂って来た。
 近ごろはこの狭い店でタバコを喫う人は数えるほどになり、愛煙家であっても周りを気にしながら喫っているのに、この茶髪のオッサンはお構いなしだ。席を移りたくなる。こんなのと酒を呑むのは絶対御免だ、と思った。
 俺が唄ったあと、このオッサン、また曲を入れた。ここはカラオケルームか?おまえの歌など聴きたくない。それに春子さんはもとより早苗ちゃん、それにアルバイトの女の子への横柄な態度に俺は嫌気がさした。自分本位で他の客までもないがしろにしているみたいだ。月一の客になった今、このオッサンをたしなめることもできない。二十年前だったら、たぶん外へ引きずり出し、ボコっていただろう。客数が減ってきたら、この手の客が幅を利かす。それが悪循環となり、良い客がまた減り、店を閉めることになったのかも。

 このオッサンは初めてだが、もう一人、ヘンな客がいる。
 いつも開店と同時くらいに来て、カウンターの一番端っこに陣取っていた俺の席は、今はプーさんと呼ばれる禿茶瓶の定席となり、他人が唄っているのをニヤニヤしながら聴いている。気色悪い人だと他の客からも敬遠されている、というか無視されている。話をしても通じない。何を言ってるのか、理解できないからだ。こんなのがお別れ会に来たら最悪だ。そんなことを考えていたら、噂をすれば何とやら、プーが来た。茶髪オッサンの横に腰かけた。最悪だ!このままじゃ煙攻撃で出て行かねばならない。どうしようと思案していたら、またドアが開いた。あ、北山だ。茶髪オッサンの横に座った。嫌な奴が三人並んだ。こいつもタバコばかり喫い、酔っぱらったら隣の客に煙を吹きかける。あ、おしぼりで顔を拭いた。仕方ないか。俺だって時たま拭くことがある。自分に甘いなぁと思いながら、横の北山を盗み見た。おしぼりで鼻をかみやがった。この斑ハゲめ。俺はこいつらに顔を背け、左の客と話をしながら、聞き耳を立てている。すると三人ともお別れ会に参加するとのこと。当日こいつらの近くだったら・・・これじゃ最悪を通り越して地獄の業火に炙られるが如くだ。ニコチン攻めに加え、くちゃくちゃと汚い食べ方をする北山を見なければならないのか。やっぱりお別れ会はスルーしようと思う。
「十川さん、そろそろ帰りませんか。お客さん一杯になったし」
「そうしようか。また来週初め来ようか」
「そうしましょ」

 俺たちは店を出た。ここに来る前に注文しておいたサンドイッチがちょうど出来上がっているころだ。店でサンドイッチが入った小さな手提げ袋をもらい「また・・」と言って、その場で別れた。
 駅へ向かう道で「あー、しんどかった」とため息が出た。そして疲れた。
 最後が近づいているから騒ぐのは仕方ないが、唄とタバコは御免だ。やっぱり明日電話をして、お別れ会には参加できない、と言おう。
 上村さんや十川だったら気配りをするから良いが、プーや北山、茶髪オッサンは顔を見ただけで体の具合が悪くなりそうな気がする。


 お別れ会への出席は断ったが、まんぷく最後の週には三回行くことになった。知り合いが春子さんへ渡したいものがあるということで、俺を呼びつけた。腐れ縁だから、わざわざ電車を乗り継いで渡したいものを取りに行くことになった。閉店の三日前だ。
 渡したいものを受け取り、大阪への電車を待っていたら、電話が鳴った。十川からだ。「今日はどうするの」と訊いてきたので、「あと二時間くらいしたら行けるかも」と言葉を濁した。今日中に渡さなければならないものでもかった。けれども十川はどうして電話をかけてきたのだろうか。その意図が理解できなかった。
 まんぷくには一時間半で着いたが、十川はいなかった。春子さんへのお別れプレゼントを持ってきたらしい。それなら俺に電話なんかしてこなくてもいいではないか。いや俺に聞かれたくないことを話したのかも知れない。もう終わりだから俺が来るだろうと予測して、来ない時間帯に春子さんと話をしたかったのだろうか。いつも早く顔を出すので、念には念を入れる十川だから、確実に俺がいない時に話をしたかったということだ。
 それは何だろうか。プーや北山が来た時、まんぷくへ行く前の食事で十川は、最終日当日に顔を出す三人娘には志保と一緒に食事をしたことは内緒にしておいてほしいと何度も念を押した。志保は俺が気に入っていたアルバイトの娘だ。友里恵と冬海の仲良し三人で交代に店に入っていた。十川も三人を気に入っていたが、アルバイトを辞めた後でも、連絡を取り合っていた。特に志保と。
 友里恵と冬海に知られても遠く離れたところに二人は住んでいるのだから構わないではないか、と思うのだが、俺に釘を刺したのだった。

 俺は知っている。志保と十川は、いわゆる不倫の関係にあることを。あとの二人にはほんの少しでも勘付かれたくなかったのだろうか。春子さんにも一緒に来たことを友里恵と冬海には話さないでと頼んだにちがいないのかもしれない。そして・・・・

 けれども分からないことがある。十川は明後日の最終日に三人娘が来ることを俺にも春子さんにも話したではないか。それなのに口止めをするなんて。やっぱりヘン。友里恵も冬海も志保が恋多き女であることくらい、とっくの昔の学生時代から知っているはずだ。卒業して二十年。結婚して離婚して、また結婚した冬海と、一度も結婚していないけれどもモテそうな友里恵、そして旦那の目を盗んで二十才以上歳の差のある十川との不倫を楽しむ志保。三人の中ではもう周知の事実なのに、口止めをするのは、十川が奥さんに悟られると大変なことになると考えているからではないだろうか。バレたら最悪だけれど不倫はスリルがあることを知っている十川。上手の手からは一滴の水も漏らさないという細心の注意というか手立てをしているのだろう。
 志保も子供が高校生になるのだから、月に一度の密会もままならなくなってきているはずだ。不倫のアリバイ作りもなかなかうまく行かないから、なおさら逢いたくなるのかな。そのためには蟻の一穴たりとも作らないようにしている感じがする。

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