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zoom RSS 華(ハナ)6回目

<<   作成日時 : 2017/02/21 09:15   >>

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 おばさんたちのことを考えてたら、もう一つ不思議なことに気がついたんです。観光客はおばさんばかりで、おじさんや若い人達は一度も見たことがありません。この町には、子供もお姉さんもおばさんやおじさんも、そしてお爺さんやお婆さんもいますが、観光客はおばさんだけなのです。
「ハナちゃん、そんなに難しい顔をしてどうしたんだい。僕の知ってることならみんな話してあげるよ」
 ぺーちゃんがお堀から上がってきて言いました。体は濡れてピカピカ光ってます。泳いできたみたいです。
「お船で渡って来なかったんだ」
「きのうより暑いからね。気持よかったよ。ハナちゃんも泳いで向こうへ渡ったらどうだい。スッキリするよ」
「うん、今度みんなで一緒に泳ごうか」
「泳ごう、泳ごう」
 ぺーちゃんは嬉しそうです。お堀の向こうでは独りぼっちなのかも知れません。ここへ呼ばれてお話をするのを楽しみにしているようです。私はぺーちゃんに観光客がおばさんばかりなのはどうしてか尋ねました。それにどこから来るのかも。
 ぺーちゃんは目をつむりました。考えているのです。図書館にある人間の知恵をまとめた本を思い浮かべ、おばさん達がどこからやってくるのかを調べているのです。
 目を開けたぺーちゃんはニコッと笑いました。何か、分かったのです。
「おばさんがどこからやってくるのかは分からなかったけれど、どうしておばさん達しか観光に来ないのかは分かったよ」
 町のはずれにみんなが知ってる有名人が住んでいるんだ、とぺーちゃんは言いました。お城のようなお家の周りは大きなお庭で、いつもきれいなお花が咲いていて、その有名人が毎日お庭の手入れをしているそうです。その姿を見るためにおばさんたちが毎日毎日バスでやってくるのです。おばさんたちはそのお家を見た後、ここで船遊びをするのです。
 おばさんたちのアイドルだから、おじさんは来ないのです。おばさんの団体の中におじさんが一人か二人混ざっているなんて、おじさんにはあまり居心地が良いものではありませんから。
「すごいな、ぺーちゃんは。図書館で調べたらいろんなことが分かるんだね」
「うん、分かることもあるけど、やっぱり分からないことの方が多いよ。おばさんたちがどこから来るのかも分からないし、白壁の土蔵の向こうに何があるかも分からないんだ。やっぱり行って確かめるしかないんだね。今度みんなで行ってみようよ」
 ぺーちゃんは嫌な臭いのするところを越えてみたいとずっとずっと前から思っているのですが、まだできないでいるのです。
 私はどこからおばさんたちが来るのか気になってるので、一度お堀の向こう側へ行こうと思います。タマちゃんも一緒に行ってくれれば良いのですが、水が苦手だからどうなるか分かりません。チーちゃんは行ったり来たりしてるのですから、たぶんついてきてくれると思います。
「タマちゃん行ってみようよ。心配なら猫の集会でみんなの考えを聞いてみたらいいよ。みんなチーよりずっと歳上なんだから、何か良い考えがきっとあるよ」
 タマちゃんは猫の集会でお堀の渡り方を教えてもらおうと思ってるようです。
「それじゃ、明日、白壁の土蔵のところで会おうよ。僕は帰るよ」と言ってぺーちゃんはお堀に飛び込みました。
 夕方、タマちゃんは塀の上で小さく啼いています。遠くからも啼き声が聞こえます。仲間とお話しているようです。私はいつものように学校帰りの生徒たちに頭を撫でられ、下校のあいさつを交わします。

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