テーマ:お話

究極の完全犯罪 その27

「じゃ。勇祐さんと呼ばせてもらう。北本は疾風の若いのを使って悪事の片棒を担がせた女性や、レイプしようとした女性を塚田のように消そうとしている。時間がないんだ。俺としてはここ二、三日中に北本を警察に引き渡したい。組織力では叶わないから、嵌めることになるが、もちろん俺の影を全く消して実行する」 「二、三日は無理かも知れないが、今週…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その26

 目蓋キズの男は邸宅の通用門を押し開けて勝手に入って行く。車庫のシャッターが勝手に上がった。中に車はなくスキンヘッドが椅子に座っていた。 「ま、ゆっくり話を聞こうか。副事務長のことだと思うが。吉田タダシさん」  俺の素性を知っている。俺はスキンヘッドの素性は知らない。人と関わり合うことは自分の生きてきた歴史を知らせていること…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その25

 俺は3000円を渡すと、ちょっと不満そうな顔をしたけれど、目が笑っていた。 「さっきの回収の兄ちゃんは、北本や塚本とは全然関係ないのやで。もう一人の兄ちゃんと、それに事務所にいる可愛いお姉ちゃんの三人でやってるんやけど、市のリサイクル業者として表彰されてるくらいや」 「どうして北本達は空き缶回収を辞めたのかな。儲かる商売と…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その24

 サトさんが笑っている。ハローワークのある所は官庁の出先機関が集まっている。家裁もその一つだ。怖いもの知らずの疾風であっても、法を守る裁判所の人達が利用する店は、本当は敬遠したいところなのだが、俺が利用していたことを知り、仕方なく毎日やってくるのだ。  店の電話が鳴った。サトさんはメモをしながらしきりに頭を下げている。 「あ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その23   +勝手な文章

 元会社の女子社員は辞めると話していたけれど、会社を自分のためだけに利用しようとする人間にとって、将来の会社のことなんて爪の先程も考えていない。それを察知して社員たちは沈む船から逃れようとする船底に棲んでいる鼠のように安全な場所へいち早く逃れようとしているのだ。  女子社員が鼠だとしたらまだしも、北本はイタチだ。鼬の最後っ屁と…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その22

 洋一らの農業ボランティアから一月ほどが経った。お昼のニュースを見ながら昼ご飯を食べていると、H病院の副事務長が病院の駐車場の車の中で死んでいるのが見つかり、警察は殺人事件と断定して捜査していると報じた。中継のレポーターは、この事件が猟奇的な殺人のようで、以前にあったワンルームアパートの一室での殺人事件の状況とよく似ていると話し…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その21

 単車の爆音で目が醒めた。まだ6時半だ。爺ちゃんが朝から作業する畑の地図を各自に渡し、洋一の婆さんがお茶とお握りをみんなに手渡した。 「じゃ、お願いするけど、くれぐれも怪我をしないようにね、お昼は高台公園だからね」  爺ちゃんが手をあげると、エンジン音を轟かせ持場の畑に向かうのだった。 「爺ちゃん。洋一は俺のことをよく知っ…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その18

 それから1時間半が経過した。俺は会社の表にまわった。表門の社員通用門が開いた。塚田が出てきた。出たとたん唾を吐いた。そして鉄の扉を思いきり蹴飛ばした。あれじゃ靴の踵が壊れたに違いない。詳細は分からないが会社内で塚田が糾弾されたのだろう。  塚田は会社から少し離れた民間の駐車場へ向かった。あの高級外国車が出てきた。俺はあとをつけず…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その17

「あの運転手は土曜日の朝、外れの空き地にトラックを止めて空き缶を集めている運転手なんだよ。あいつはね、量りに細工をして重量を1割5分も誤魔化しているんだよ。こっちで量って持って行くと、いちゃもんをつけるんだ。前は別の業者だったけど、いつのまにかあいつが来るようになったんだ。あの疾風の息のかかった者とは誰も思ってなかったよ。あいつが来…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その16

「オラオラ、ホームレスが恐喝か。ふん、疾風にケンカを売るとは大したものだ。え、この落としまえ、どうつけるんだ」  疾風と聞いて鼠男達はすごすごと引き上げてしまった。お姉さんは北本が出てきた時にはすでに立ち去っていた。さすがだ。  これでうまく行った。まずは北本の本性をビデオにおさめることが出来た。それにバックにいる組織が疾風だと…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その15

 北本の調査のついでに課長の家のことも探ろうと思ったのが幸いした。課長の家は幽霊タウンの3つ手前の駅の小さい戸建てが建て込んだ一角にあった。少し離れたところを自転車で行き来して様子を伺った。二階のベランダに息子らしき若者が出てきて辺りをうかがっている。胸騒ぎがした。俺は少し離れた高台の公園までペダルを高速回転させた。そこから課長…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その14

 幽霊タウンに住みついて5年になるお姉さんはここに住んでいる身内のことや、時おりホームレスなんかがやってきて住みつくことなどを話してくれた。冷暖房や風呂のエネルギーはすべて電気で賄うという優雅なものだが、その実は近くの電気設備のあるところから電線を引き、水道の元栓を開けて勝手に水を得ているというものだ。  そんなお姉さんが怒り心頭…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その13

 車が去ってから10分ほどして俺は北本の部屋の裏に回った。やっつける相手のことは生活習慣や行動まで把握していなければ、思わぬ所で足を掬われるからだ。洗濯物などが干してあったら、シャツ一枚で暮らしぶりや消費志向は分かるとテレビに出てた探偵業の男が話していた。その言葉どおりに調べてみることにした。が何もなかった。もう1度入り口に回り…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その12

 急いでホームへの階段を駆け上がった。そしてホームにある安床屋に飛び込み、丸坊主に、と注文した。バリカンで刈ってもらっている間ホームの様子を注視した。誰かは誰だか分からないが、感覚で分かる。相手は俺を見失ったようだ。ここなら外からは見えないが、内側からはちょっとブルーに色付いているが、くっきり見える。今のところ怪しい人物はいない…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その11

 俺は岸谷小夜子の顔を見た。俺の意図を察したのかちょっと思案げに顔を傾けてから話し出した。 「250万円はこの前怪我をした塚田っていう人の会社から支払われた機械代金ですよ、きっと。私、入金がないので北本に催促したの。たぶん現金で支払われたので、しばらく流用していたのかも。それをうまく吉田さんの横領に結びつけたのよ」  そうか、う…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その10

 ちょっと古びた建物だ。コンクリートの階段を上ってゆくと、暖簾が出ている飲み屋があった。店内はこじんまりした小料理屋だ。こんなに早く開いている店も珍しい。職安の近くだからなのだろうか。 「君はいろんなお店を知ってるね」 「吉田さんは会社と自宅の往復で満足していたのでしょ。私なんか、毎日会社でお金を扱っているから、時々狂いそうにな…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その9

「北本はせこい奴だから、いつもおばちゃんは頭にきてたの。定食の代金を払わなかったり、おかずや御飯の量に文句をつけるのなんて毎日のこと。好き放題だったのよ。おばちゃんは昨日の夕方、吉田さんがクビになることを知ったようなの。ごますり課長が話したのよ。おばちゃんは帰りがけ、あそこのコンビニで北本を見つけ文句を言ったらしいの。そこからどうし…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その8

 岸谷小夜子は本当のことを話したのか、それとももう一度俺を罠に嵌めて北本と一緒に俺の嘆きを楽しもうとしているのか、今は分からない。いや、わかったところでどうにもならない、ってことだ。苛めっ子が虐められっ子をとことんやっつけようとするのと同じで、明日、出勤しても今日よりひどい目に遭うことになる。それでも出社しなければ、2番手である課長…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その7

 そのまま正面の通用門へ向かった、昨夜の守衛が「クビになったの?可哀想に、ただ酔っぱらっただけなのにねぇ」と言った。 「おじさんもスマホをするのかい」 「いや、普通のケイタイだけど、配信されたよ。こんなこともできるんだね。けれどもあの写真は本当に吉田さんが女の子の下着に手を入れようとしているところなのかね。昨夜は酔っぱらってたん…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その6

 翌日出社すると北本が笑いながら言った。 「ちょっと話があります。来てくれますか」  そう言っただけで3課から出て行った。俺も後をついて行った。課長は何も言わない。 「こんないやらしい写真を社内にばらまかれたら困りますよね、吉田さん」  北本はスマホを見せた。目をつむった俺の顔に岸谷小夜子が唇をくっつけている。  来たぞ。…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その5

 バスを待っている間、俺は周りに気を配った。もしかして……ってこともある。どこで監視されているか分からない。あいつは俺が病院へ行く時間を知っていた。後をつけてきたとも考えられる。まさか午後になっても病院にいたことは知らなかったはずだけれど、用心に越したことはない。  会社に帰った。北本は席にいない。予定表のところに目をやると、直帰…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その4

 俺は勝手に軽い火傷だろうと考えたが、あいつはどこを怪我したのだろうか。車椅子に乗って一階でタバコを喫っていた。だからこそ軽い怪我だろうとは思っていたが、何処を怪我したのか分からなかった。クソッ。もう昼食の時間になっている。塚田は必ず食後、さっきのようにまたタバコを吸いに一階に降りてくるだろう。どうする。昼からはクライアントのご機嫌…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その3

 工員の入院してる病院には電車とバスを乗り継いで三〇分ほどで着いた。外科病棟へ行く途中、車椅子の患者三人が向かい合ってタバコを吸いながら話をしている。入り口の脇でだ。病院内はもちろん敷地内も禁煙だが、内臓の病気や呼吸器疾患等ではない外科の患者によくあることなので気にもとめず病棟に入ろうとした時、その三人の話し声がひそひそ声に変った。…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪 その2  +いよいよ非常事態?

 部屋で差出人を見た。若葉高校26期D組同窓会となっていた。幹事は佐野ヒロシだ。  高校を卒業してからも年賀と暑中のあいさつを交わしているのは佐野ヒロシと佐川新一先生の2人だけだ。あとの同窓生との交流は何もない。いつも馬鹿ばかりしていた佐野と恩師の佐川先生だけは何故か馬が合うからなのだろうか。  ちょうど1月後の土曜日に隣の…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

究極の完全犯罪  その1

 推理小説では完全犯罪と銘打ちながらも、最後には完全犯罪は成立しないのが定番だ。もしも完全犯罪が成立するならば、そんな推理小説自体が成り立たない。これは推理小説のパラドックスでもある。  絶対に犯人が判明してこそミステリーという小説のジャンルがあるのだ。  しかし完全犯罪は世の中に腐るほど発生している。迷宮入り事件がそうだ。…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ク マ  その10 最終回

 最悪の状態に陥りました。何も食べられない日が何日も続きました。そして野良犬仲間は私の周りから一匹もいなくなったのです。隣町や川を渡って対岸の町に移って行ったのでしょうか。それとも街のどこかで隠れ棲んでいるのかも知れません。私は食べ物を求め街へ出ることを決断しました。このままでは餓死してしまうからです。  食べ物の臭いがだんだん強…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

記憶と和解の碑  詩人 尹 東柱(ユン ドンジュ)

宇治市の天ケ瀬ダムの前にある大きな橋。 その横に 記憶と和解の碑 があります。 この碑、3年ほど前に訪れた時にあったかどうか、記憶にはなかったのですが、 今回、またダムを訪れ、あるのが分かりました。 記憶と和解とは・・・初めての碑ですので、 何を意味するか、理解できなかったのですが、 碑の裏に…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ク マ  その9

 頻発している動物殺傷事件のことがテレビニュースで取り上げられたのは、犬の遠吠えを聞いた翌日の夜のことだった。その昼に河川パトロールの事務所に熊がうずくまっているのでどうにかしてくれと電話があり、職員が急いで出向き、熊のような大きな犬が死んでいるのを発見した。その映像を見て、あの熊であることはすぐに分かった。首に釘のようなものが…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ク マ  その8

 あれから一週間が経った。一日おきに早朝ジョギングをしたが、クマはおろか熊やその仲間の野良犬を見ることは一度もなかった。みんなしてどこかに隠れているのだろうか。たぶん他の野良犬達もクマの怪我の理由を知って人間には近づかないようにしているのかも知れない。  二日に一度のジョギングとは言え、下腹部の出具合が少しへっこんできた感じだ。継…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more

ク マ  その7

 あのオッサンにこんなにすぐに会うことになるとは思ってもいませんでした。餌を持って今朝走りに来たのに、昼からまた走るなんて、あの体型から見たら信じられません。でもオッサンがやってきたのです。おまけに傷に絆創膏を貼ってくれたのです。やっぱりヘンな人です。けれども釘を飛ばした野球バカと較べれば雲泥の差です。もちろんオッサンの方が良い人間…
トラックバック:0
コメント:0

続きを読むread more