究極の完全犯罪 その27

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「じゃ。勇祐さんと呼ばせてもらう。北本は疾風の若いのを使って悪事の片棒を担がせた女性や、レイプしようとした女性を塚田のように消そうとしている。時間がないんだ。俺としてはここ二、三日中に北本を警察に引き渡したい。組織力では叶わないから、嵌めることになるが、もちろん俺の影を全く消して実行する」
「二、三日は無理かも知れないが、今週中に北本の住処と行動パターンを調べあげる。人手が必要なら言ってくれ」
 こう話している途中で目蓋キズが出て行った。
「それじゃ、今後の連絡はどうする?」と決めようとしたときにケイタイが鳴り、すぐに切れた。メールだ。
「ケイタイは嫌いだから幽霊タウンのお姉さんの家に書いておくよ」
「あのお姉さんの家はわかるが、どこに書いておくんだ?」
「明日の朝に前を通れば分かるはずだ」
 こう言って勇祐はガレージを出て行った。俺が他人の家のガレージに取り残された形になってしまった。このままじゃ完全に空き巣に間違われてしまう。ガレージの閉め方が分からないから、そのまま出ようとしたら女性が勝手口から入ってきて、会釈をした。
 誰だ。俺のことを知っているのか。スキンヘッドの小林勇祐の関係者なのだろうか。頭が混乱してきた。この家の住人だろうが、いくら自分の家でも、見知らぬ男がいたら躊躇するのが普通だろう。どうなっているのか理解に苦しむ。
「吉田さん、ですよね。お姉さんが吉田さんに会ったらよろしく伝えて、って話してました。あ、失礼しました。私は廃品回収業の英商事専務の小林遥と申します」
「スキンさん、いや勇祐さんのお身内の方でしたか。それはどうも吉田と申します。けれどもお姉さんって、幽霊タウンのお姉さんですか? 私の本名は知らないはずです。どうして分かったのかな?」
 俺は混乱してきた。あのおばさんまでもが俺の名前を知っているという。今朝、探偵に化けて情報を聞き出したばかりなのに。前から俺の素性はばれていたのか。それじゃ、あの金額のやりとりなんかの時の電話のこともウソだと知っていた、ということか?
 俺の思いを察してか、遥が言った。
「そうですよ。勇祐義兄ちゃんにアルバイトを頼んだ時から、すべて調べ上げたのよ。あの北本が空き缶回収に割り込んできたからなの。空き缶回収は誰がやろうと、最後に行き着く先は同じ業者なんだから。だから反対に言えば大元の業者と仲良くしておけば、回収に関係している全ての人達はもちろん、その周辺の人達のことまで分かるわけです」
 俺は、さもありなん、と思った。アルミ缶のリサイクル率はたぶん100%近くに達しているだろう。作るよりリサイクルする方が安く再生できるからだ。再生できるが、誰もが簡単にできるというものではない。きびしいリサイクルの法律を守るには莫大な資本も必要になってくる。だから大元から逆に辿れば、すべてのことが明らかになるのだ。
「わかったようですね、吉田さん。私はあのおばちゃん、いえ、お母さんの末娘なの。何回も顔を会わせていたのよ。スーパーで」
 こう言ってケラケラと笑った。
 俺はおばさん、いやお姉さんが覚えていないだろうと思っていたが、それは全く逆だった。ずっと俺のことを観察していたのだ。
「あ、それともう一つ。吉田さんはあの幽霊タウンの電気はどこからか盗んでいると思っているでしょうが、あれは真っ赤なウソですよ。念のために。あそこの一角はお母さんが購入したもの。北本が住んでいたところも本当はお母さんのもの。あいつらが何をするのか見極めるために、放っておいたの」
 こう言ってさらにケラケラと遥さんは笑った。
 最初からお見通しのお姉さんだったのだ。

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