究極の完全犯罪 その26

2003小説.JPG

 目蓋キズの男は邸宅の通用門を押し開けて勝手に入って行く。車庫のシャッターが勝手に上がった。中に車はなくスキンヘッドが椅子に座っていた。
「ま、ゆっくり話を聞こうか。副事務長のことだと思うが。吉田タダシさん」
 俺の素性を知っている。俺はスキンヘッドの素性は知らない。人と関わり合うことは自分の生きてきた歴史を知らせていることにもなるのだろうか。分からないが仕方ないことでもある。
「俺は副事務長はまだ生きていると考えるんだが、どう思う?」
「どうして生きていると思うんだ。猟奇殺人としてあれだけ大きく報道されたんだぜ。まだ犯人は捕まっていないけど」
「猟奇なんてことには興味はないが、あの副事務長は人を殺しても、簡単に殺されるような奴じゃないよ。何かからくりがあると俺は見ている」
「さすがだね。そう、あいつは生きている。ハヤテをさらに強固なものにして全く新しいアウトローの世界を構築しようとしている。そのことは公安も気づいていない」
「副事務長はどこかに雲隠れしているんでしょうが、表社会へは出てくることはできませんよ」
「吉田さんも甘いね。副事務長と理事長はどんな仕事をしていたか考えれば自ずと分かることですよ」
 こう言ってスキンヘッドは笑った。
 H病院が関係しているんだ。サトさんが殺されたのもそうだし、副事務長の死体が見つかったのは病院の駐車場だ。
 もやもやが晴れそうだ。
 ・・・
 分かったぞ。簡単なことじゃないか。最初から答えはあったのだ。
「どうやら分かったみたいだね。吉田さん。そう、思っている通りだよ。猟奇殺人事件だが、世間は騒ぐが、それこそが北本と副事務長、そして指示を出した理事長の思う壷に嵌まってしまったんだ。みんなが、ネ」
「俺は猟奇という言葉が嫌いだったから死体がどんな状態だったか知らないが、それが関係しているんだね」
「そうだよ、吉田さん。塚田の殺され方が猟奇的だったのは、替玉を副事務長にするための布石だったんだ。顔が原形をとどめないくらいに壊されていたのもそのためだ。副事務長もそんな状態だったから血液型なんかで死体が誰なのか特定されたのだが、理事長や死んだはずの副事務長が細工しておけば、警察が調べても本当のことは分からない。
「そこまで知っているということは、あんたの仲間がいなくなった、ってことなのか」
 俺はスキンヘッドが棲家が奪われ、仲間が突然消えてしまったことから、調べたのかと思ったが、このガレージが気になった。この立派な邸宅に自由に出入りしていることも理解できない。
「吉田さん。疑問が次々に湧いてきているみたいだね。そう、誰だってホームレスがこんな邸宅のガレージを勝手に使うなんてできっこないもの」
「それじゃ、ここはあんたの家なのか」
 こう尋ねるとスキンヘッドは嬉しそうに笑った。目蓋の横に傷がある男が、突然大きく笑い出し、なかなか止まらない。スキンヘッドも連られてだんだん大笑いになってきた。
 ガレージに入る前に入り口のポストや表札で名前を確認しようと目を配ったが、なかった。この邸宅自体が普通じゃない気がした。
「あんたの家なのか。ここは」と、もう一度尋ねた。
「ホームレスが家を持っていたらホームレスじゃないよ。これは身内の家だ。この駐車場だけをしばらく借りることにしただけだ。河川公園のブルーテントが撤去されたから仕方ない。来月になればまたあそこに戻る予定なんだ。それよりも副事務長がどこに隠れているか、早く探して化けの皮を暴かなければ、何もかも闇の中に隠れてしまう」
「俺は北本がどこに棲んでいるかは知らないが、まだ会社勤めはしている。スキンさんが調べればすぐわかると思う」
「スキンさんって俺のことか? 小林勇祐ってのが本当の名だ」

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント