隠し神 第3部 No30 あと4回くらいで終わりです。

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 俺がどうして生きて戻ることができた、って? 信じられないだろうが、こうやって生きて戻ってきた。簡単なことだよ。四階層上の世界へ降り立ったのはヘルヘイトだけで、俺は境界の家と同じように時間の狭間のなかにいたのだから。
 ヘルヘイトは上位の世界から操っていても下位の影響を受けると思っていたようだが、元々その世界へ降り立っていなかったら、影響を受けることはない。境界の家は他の次元の影響を受けないことで成り立っていた。それをヘルヘイトは忘れていたようだ。

「ありがとう。みんな解決したのね」
「そうだと思うよ。もう悪い神の影響はなくなったんだ。揺りかごで眠っていた神たちはどうしてる?」
「みんなそれぞれの持場で仕事をしていると思うよ。この島には神様はいないはず」
 洋子が言ったとたん、エッヘン、とせき払いがした。
「お姉ちゃん。僕はいるよ」
「儂もダメ男を待っていたんじゃ」
「私もよ」
 麗奈さんだ。
 みんなの声が聞こえ、そして目の前に現れた。
「久しぶりじゃのう。御苦労じゃった。まさかヘルヘイトが生き返って来ようなんて思わなかった。千年に一度の安息日に合わせたように現れよって。ダメ男が人間で助かった」
「何が助かった、だ。せっかくの旅行が台無しになってしまった」
「それは悪かったのう。埋め合わせに、盛大にダメ男と洋子君の結婚式をしようではないか。さ、行くぞ」
 こうイデレブラが言うと、幽霊船のような奇ッ怪島がメタリックの巨大宇宙船に変身して大空に浮かび上がった。
 奇ッ怪島はやはり神様の時を翔る船だったのだ。
「さ、田中屋旅館を目指して遊覧だ。各地の名所旧跡を空から眺めるのも良いぞ」
 ウリボーとジャイケンをした操舵室から眺める下界は素晴らしい。見たい所がズームアップして見ることができる。なんだか千手観音で飛行しているときと同じだ。
「ダメ男、この船は別名、万寿観音、というのだ。万年も幸せでいてほしいとの願いを込めて名付けられたのじゃ。千手観音は万寿観音の子分でもある。横を見てみろ、平走して飛んでおる」
 千手観音は奇ッ怪島である万寿観音の舳先くらいの大きさで、人が二、三人乗れるくらいだと初めて知った。
 そんなことを思って千手観音を見つめていると、万寿観音に急接近してきた。まるで俺の考えていることがわかって寄ってきたような塩梅だ。
「ダメ男君、御苦労さん。もうすぐ到着するけど、先に僕のワイフを紹介しておこう。万寿へ送るから、よろしく頼む」
 義父はもとより義母まで千手観音に乗っていて、義母がこっちへ来ることができるなんて、人間では考えられないことだ。神様なのだろうか。
「あら、私は人間よ。洋子と紘子の母ですもの」
 俺が考えていることがわかっている。やっぱり洋子の母だ。
「ダメ男さん。はじめまして」
 いつのまにか麗奈さんが俺の前に立っている。………麗奈さんじゃない。それにしてもよく似ている。
「はじめまして………」
 次の言葉が出ない。
「お義母さんですね。麗奈さんじゃないですよね?」
 手で口元を隠して笑っている。しばらくして義母が話し出した。
「娘がお世話になっています。今日は娘の花嫁姿を楽しみにして来ましたのよ。ダメ男さんは和装、洋装、どちらがお好きですか」
 洋子はどう思ってるのだろうか。聞こうとして洋子を探した。どこにもいない。さっきまでみんなと外の風景をみていたのに。
「先に旅館へ帰ったわよ。準備しなきゃ」
 洋子や義母、義父、みんなが瞬間移動できるのか? 紘子だけが旅館に留まっているのだろうか。
「紘子は女将だから、めったに旅館を空けることはありません。今日は式の準備で大忙しなのよ」
 誰にも言わず、勝手に結婚したような形になっている俺達だが、洋子の両親も俺を認めてくれているようで、安心した。
「さ、着いたようです。ダメ男さん。すぐに準備してくださいね。お祝いの方々がお待ちですよ」
 こう言って義母は消えた。やっぱり洋子の一家は神様の一員のようだ。勝手に瞬間移動している。

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