隠し神 第3部 No.28

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 神様をも凌ごうとするヘルヘイトを倒すなんて本当にできるのだろうか。俺だってヘルヘイトがどこにいるのか分からないし、向こうもこっちもお互い近くにいるけれど分からないから攻撃できないなんて滑稽だ。このまま持久戦になれば人間である俺が負けてしまうだろう。その前にヘルヘイトを見つけなければならない。不意に攻撃されでもしたら助かりようがない。
 ヘルヘイトの居場所を確認することが最優先だ。どこにいる。海の中か、それとも海上か。見えないなんてことはないはずだ。変な物は見えていた。巨人だって見えていた。今も、見えないのではなくて、本当の姿を知らないことでわからないだけだ。
 反対に俺は絶対にヘルヘイトに見えない。見えるはずがない。体は上の階層にいるのだから。ここへはヘルヘイトは来ることはできない。何かにくっついてしか次元を移動できないヘルヘイトなのだから。上の階層へ来ることはできないのだ。
『喰らえ!』
 真っ赤に焼けたどろどろの無数のつぶてが飛んできた。避けることはできない。つぶてが当りズルズルと体が溶けて燃え上がった。
『馬鹿が。余分なことを考えているから溶けてしまうのだ、何も考えずにじっとしていたなら私もダメ男を見つけることができなかったのに。たとえ上位の階層に実体があったとしても、関連する虚像が傷つけば実体にダメージを与えることを知らなかったようだな。もう少しでこの世界へは戻れなくなるぞ』
 見つけた。ヘルヘイトは宝石珊瑚と一体化して俺の目から逃れていた。海の底ならどこにでもある珊瑚の化石だが、こんな北の海に宝石珊瑚があるはずがない。奇ッ怪島で身を隠していたそのままの形をこの海域に持ってきたのがヘルヘイトの誤算だったのだ。
 俺の居場所を少しだけ明かしたらヘルヘイトは乗ってきた。そしてあのつぶてだ。仮の体は九分以上燃えて、針金でできた芯みたいになって燻っている。そのことが本体に影響があるとヘルヘイトは考えているようだが、全くの的外れだ。その種明かしは後にして、今はヘルヘイトを消滅させるだけだ。
「ど、どうしてこの世界に戻ってくることができたのだ。も、元締が消滅させたはずだ。本当はヘルヘイトの偽者ではないのか」
 苦しそうに、そしてわざと怒るように俺は話した。
『偽者だと。フ、フ、フ。もうすぐあの世に行くのだから冥土の土産に教えてやろう。ルーガブラたちが私が長年過ごしていた境界の家を三階層も上へ飛ばしたあと、ダメ男と元締が千手観音でやってきて、お前を残して千手観音が移動した時、私の一番信頼できる神虫を忍びこませたのだ。もちろん境界の家で進化してきた神虫だ。私の意志も伝えることができる神虫は、いわば私の子供と同じなのだ。あの時洋子と紘子が口出ししなかったらもっと早く帰ることができたのだ。ま、こうして元締たちも手を出すことができない神となった今、これからこの世に君臨することができるのだ。ダメ男よ。私の下で生き残ろうとするなら助けてやっても良いぞ』
 ヘルヘイトは勝ち誇ったように言い放ち、豪快に笑った。
 俺は何も言わなかった。高笑いするヘルヘイトが油断している隙に攻撃方法を必死になって探さなければならなかった。けれども良いアイデアは湧いてこない。神様と出会った時から他人を攻撃するなんて考えたこともなかった。
「あなた、ウリボーが元気になったよ。思う存分戦ってね」
 知ってか知らずか、洋子がウリボーの様子を報告してくれた。
 洋子の応援があっても攻撃をどのようにしたらよいかは教えてくれない。元締の協力もない。俺には武器はない。スーパーコンピュータではないがヘルヘイトが悦に入っているごく短い時間に一所懸命考えたが、攻撃方法は思いつかなかった。千手観音が居たら別なことも考えられるのだが、手元まで来てくれない。最後の願いと言ってもう一度元締に頼んでみようか。たぶんダメだろう。ウリボーを元気にしたと言うが、神様のすべてが目覚めて元に戻ったということでもなさそうだ。みんなが元気ならば絶対に加勢してくれる。ヘルヘイトの配下になんか神様は絶対にならないからだ。
 俺はじっとしていた。こっちからは何もできないから、ヘルヘイトが攻撃してくる寸前にかわさなければ本当にこの階層の俺にも影響するかも知れない。
 あ、そうだ。簡単なことだ。
 わかった。
 ヘルヘイトを葬り去る方法が。
 わかったが、ヘルヘイトと接触する必要がある。接触しなくてもできるが、それではまた一部が生き返る可能性もある。
 とにかく行動に移すことが先決だ。
「ヘルヘイト、最後だぞ」
 俺は正々堂々と通告してから、ヘルヘイトを消し去ることにした。

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