隠し神 第3部 No.24

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 姉妹そろってウリボーのことをよく知っているな、と思ったが、それを洋子に聞くことを今はできない。洋子たちにとってウリボーが死んでしまうことをくい止めたいと思っているのだ。だから姉妹して俺にメッセージを送ってきたのだ。あの華子を助けたように俺にはウリボーを助けることができると思ってのことだ。
 どうしたら良いのだろうか。揺りかごを守って救ったのは俺よりもウリボーの方だ。そのウリボーを見殺しにはできない。そんなことは分かり切っているのだが、その救出方法が分からない。このまま千手観音でもう一度海底まで行き、ウリボーを連れて戻ってくれば良いのだが、今までの方法でできるなら、洋子達は俺にそのように言うはずだ。
 神様だって、この奇ッ怪島に戻っているのだから、神様達に意見を聞いて、すぐさま助けに向かえばできるのではないか。そんなことを考えていると、ヒステリックな大きな声がした。
「はやく!」
 洋子と紘子がまた叫んでいるのだ。
「あと6分でウリボーは死んじゃうの。何でもいいから、ウリボーのところへ早くゆきなさいよ」
 完全に怒っている。
 6分あるなら、なんとかなりそうだ。いや十分な時間ではないか。たった6分と思うのか、まだ6分もあると思うのとでは心の準備は勿論のこと、物理的にも大きな差が出てくる。
「また考えてる。早く動いてよ」
 おれがずっと突っ立っているのに業を煮やしている姉妹なのだろう。それじゃ洋子達の思いを乗せて、また千手観音で一潜りだ。
 俺はゼスチュアを大きく、そして一段と速くして海に潜った。潜る格好に加え、変な物の探査と同じようにウリボーの居場所も同時に調べた。洋子が海淵と話していたことも付け加えてだ。
 いた。こんなに深いところでウリボーは圧力に必死で耐えている姿がモニターに写し出された。
 あの大きなイカが半分くらいに縮んでいる風に見える。じっとして動かない。
 半分くらいに縮んだといっても小さな鯨くらいの大きさはある。どうやって引き上げればいいか分からない。急を要する。俺は両手でウリボーを抱える仕草を何度もした。すると巨人の破片を集めた時のように千手観音の手が同時に数え切れないほど飛び出した。
 無数の手がウリボーを優しく包むようにして持ち上げた。俺は上へ飛び上がった。が、その動作をなるべく優しい感じですると、ウリボーがこっちを見た。死にそうにも思えるが、やすらかな感じだ。
 内心、俺は早く別の場所へ移動させなければならないと思った。もう時間がない。最後の手段だ。訓練でイデレブラと別の階層へ行った時のことを思い浮かべ、移動するのも一つの方法だが、ヘルヘイトを消滅させるために元締に連れてもらったこの千手観音に乗ったままウリボーを移動させるのがベターだ。
 元締と観音様で移動したときは分からなかったが、透明の元締というか、俺の目には見えない元締が飛ばすために変な格好をしていたに違いない。あの時、姿を現すと言ってたのに現さなかったのは、変な格好を俺に見せたくなかったからだと思う。威厳に満ちた神様のプライドが許さないに決まっている。
「………」
 頭の奥に誰かが囁いているのだが、理解できない。深海にいるからなのだろうか。
 俺は雑念を捨て、一心に念じた。
 いつもの瞬間移動の時のように過去と未来が交錯した情景が走馬灯のように流れる。
 そして止まった。
『御苦労だったな、ダメ男。ようやく私の望みが叶った。礼を言うぞ。ハ、ハ、ハ』
 ヘルヘイトの勝ち誇った声と高笑いが聞こえてきた。

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