隠し神 第3部 No.19

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 大きなゼスチャーで速さを表現して、スピードを出して俺は体当たりを試みた。衝撃は何も感じなかった。モニターで外をみた。何も変っていない。巨人はそのまま突っ立っている。もう一度試してみることにした。大きく手を振ってスピードを上げようとした時に頭の奥に痛みが走った。俺はそのままの格好でいると、ウリボーの声が聞こえて来た。
「ダメ男、ダメだよ。当たっちゃ僕が壊れてしまう。ダメ男には見えないと思うけど、さっきの衝突でこの巨人はヒビだらけになっているんだ。次に観音様が衝突したら完全に壊れてしまい、僕も死んじゃうんだ。早く本体の変な物を捕まえて、この巨人の中から僕を救出して欲しいんだ」
 ウリボーの切羽詰まった声だ。巨人に衝突するのを寸前で止め、急旋回して巨人から離れた。するとどうだろう。巨人のひび割れた姿が現れた瞬間、赤銅色に変り、こっちへ手を伸ばし、捕まえようとする。
「ダメ男、こいつの弱点は塩水なんだ。海の中に潜って足のところに当たれば、そこから海水が侵入するんだ。あの時と同じだよ。そうすれば倒れて赤銅色の巨人はバラバラになるから」
「海水の中にいるのに塩水が弱点だなんておかしいじゃないか」
「おかしくてもそうなんだから仕方ないよ。変な物をヘラでつっ突いていた時もダメ男は溺れなかっただろ。こいつもあの時の状態にあるんだ。バリアをとれば、悪い神の思念というか残滓の巨人も壊れてしまうはずだよ」
 やっぱり悪い神の名残りがこの巨人をつくり出したのか。いつまでも人に迷惑をかける悪い神だ。ウリボーはもとより中で寝ているのか避難しているのか分からないが、神たちを早く救わなければならないことだけは確かなようだ。
 けれども千手観音は海に潜ることができるのだろうか。次元を越えることができるのだから、潜水艦になってもどうってことはないけれど、海へ潜るに下を向いて、潜るゼスチュアで良いのだろうか。そこのところは義父に教えてもらっていないが、まぁ、そんなところではないだろうか。
 俺は下を向いて平泳ぎで潜る格好をしてみた。間髪を入れず千手観音は猛スピードで海面に垂直に突進した。カワセミが獲物を捕るときの感じだが、千手観音に乗っている俺には何の衝撃も感じなかった。
 海の中に入っても底は見えない。
 海面から随分潜っているようだが、まだ海底に着かない。海溝から生えてきているのが赤銅色になった巨人なのか。
 外の眺めがゆっくりになった。潜るスピードが落ちた。深海魚がこっちを見ている。もうすぐ海底のようだ。巨人の足は大きいようにも見えるが細いのかも知れない。比べる対象がないので分からない。

「ウリボー、海底に着いた。この足を壊せばいいんだな」
 俺は尋ねたが、何も言葉は返ってこない。深海まではウリボーの能力は及ばないのか、それとも巨人の中にいてダメージが増しているのかも知れない。早くしなければならない不安が増してきた。
 俺はもう先のことを考えずに巨人の足下に体当たりをくらわした。千手観音にショックはなかった。足にあたり突き抜けたと思ったが、そこに巨人の足はなかった。
「ダメ男、気をつけろ。巨人のキックが来るぞ。いくら高水圧に耐えることのできる千手観音でもこいつのキックにはかなわないぞ。早く逃げろ」
 義父の声だ。家から一人で出発した時からずっと俺を見守っていてくれたのだ。
「危ない」
 キックが飛んで来た。かろうじてかわすことができたが、グルングルン回って飛ばされた。
「巨人の破壊力に気をつけろ。第二弾が飛んで来るぞ」
 すぐに避けることができるように、俺は身構えた。
『フ、フ、フ。ダメ男。三階層上の世界とは違うだろ。ここは深海だ。宇宙よりも手強いぞ。フ、フ、フ』
 元締と洋子たちにより消滅したはずのヘルヘイトの声だ。この世界に戻ってきたのだろうか。そんなはずはない。本体は絶対に消滅している。変な物だってヘラでこそげ取ることのできるくらいの大きさだった。こんなにでかい巨人に変身できるはずがない。どこかにカラクリがあるはずだ。

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