隠し神 第3部 No.10

画像「ダメ男はエネルギー保存の法則って知っているだろ。この地球上にあるエネルギーはいろいろ形は変えるけど、なくなることはないってことだよ。ま、成層圏付近に逃げていく熱や光のようなものは仕方ないけどね。悪い神様の生きていたエネルギーも別の物に変化したと考えるのが妥当だと思う。そこでね、良いエネルギーに当れば爽やかな気持になるけれど、悪いエネルギーが来れば気分も悪くなる。同じエネルギーだけれど質がちがうんだ。解る?」
 いっぱしの学者みたいに蘊蓄を垂れる、こまっしゃくれたイカだ。
「こまっしゃくれた、って思ってくれてもいいよ。でもダメ男より長く生きていることだけは確かだよ」
 ちょっとすねたように俺の立ってるところを上下に動かして言った。人の考えが分かるイカなのだ。
「それは失礼しました。でも、どうして神様は奇ッ怪島の底に穴が開いているのを知らないのかな」
「神様の揺りかごが奇ッ怪島なんだ。神様はこの船で生まれて、この世界はもとよりあらゆる世界に旅立って行くんだ。船の底のことなんか今まで誰も気にかけていなかったし、見ることもなかったんだ。だから悪い思念が船底にへばりついてしまったんだ」
 奇ッ怪島が何故神様の揺りかごかはウリボーも知らないみたいだ。しかし神様のペットだけあり、揺りかごとしての重要性は認識しているみたいだ。
「ウリボー、このことを神様に教えてもいいのかな?。早く修理するにはその方が良いと思うけど……」
「いいよ。ダメ男が教えてあげればいい。そのためにここへ来たんだから。その代わり後でもう一度ここへ来て一緒に遊んでよ。約束だから」
 やっぱりウリボーは幼児のような考えも合わせ持っている、不思議なイカだ。
 ウリボーは俺をあの長い足で抱き上げ、奇ッ怪島のデッキのところまで足を伸ばして送り届けてくれた。
「じゃ、後で」
 そう言ってみんなして海底へ帰って行くのだった。
 甲板から下に降りる階段を下っているとイデレブラが声をかけてきた。姿はない。
「どうじゃった、ウリボーの機嫌は。今日はいつもより早く引っ張るのを止めたようじゃが。ダメ男を気に入ったようじゃな」
 爺さんは俺の心を覗けるのに、さっきイカと話をしていた内容を知らないでいる。早く船底に開いてる穴を塞ぎ、くっついている変な物を取り除かなければならない。
「ウリボーは船底にある穴を早く塞ぎ、くっついてる変な物をなんとかした方がいいと言ってたよ」
 イデレブラは何のことやらさっぱり分からないといった感じだ。
「変な物って何じゃ。生き物か?」
「くっついて穴をあけるんだから生き物だと思うよ」
「儂はそんな生き物は知らないぞ。麗奈さんはどうじゃ」
「私も初耳です。ダメ男君、ウリボーにからかわれてるんじゃない」
「そんなことはないですよ。誰も島の底を見たことはないんでしょ。早く調べて対処しなきゃ、イカたちが島というか船が沈まないように無茶苦茶引っ張るよ」
「それって変じゃない?。なんだか知らないけど、引っ張りまわせば余計に海水が入ってくるじゃない。やっぱりウリボーはからかっているのよ」
 俺もそこのところはヘンだと思っていた。変な物がくっついていたとしても、動き回ったら変な物も剥がれ、穴を塞がない限りどっちみち海水は入ってくる。やっぱりウリボーはからかっているみたいだ。いや、ウリボーはそんなことはしない。疑うのは良くない。もう一度会って俺が疑問に思っていることを尋けば済むことだ。
 この俺の考えは爺さんたちには聞こえてないみたいだ。何の反応もない。
「洋子、ウリボーに連絡をとってくれ」
 口に出して言っても洋子は見当たらないし何も言わない。この奇ッ怪島自体が俺が来た時よりも変化しているみたいだ。
「洋子!」
 強い口調で言ったが、何の反応もない。この帆船自体が静寂すぎる。海に浮かんでいるなら波の音や海鳥の鳴き声なんかが聞こえてきてもいいはずなんだが、物音一つしない。
こうなったらウリボーにコンタクトするしか方法はないみたいだ。

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