隠し神 第3部 No.12

画像「それじゃもう一度やってみるけど、このままじゃバリヤーを突き破れないから、ウリボーも手伝ってくれるかい」
「どうすればいいの?」
「この島の食堂や倉庫から竹でできたヘラやナイフを持ってきて、みんなでこのバリヤーと船底の間に差し込んで欲しいんだ。そうすれば変な物も剥がし易くなる」
「わかった」
 ウリボーが仲間と連絡をとったのか、周りからイカの足が無数に伸びてきて島を揺さぶっている。デッキの下に続く階段あたりで我先にヘラを探しに突入したためだ。見つけることができなかったイカは大きな貝殻の破片や珊瑚の枝を持ってはしゃいでいる。
「ダメ男も必要だろ。どっちがいい?」
 銀のナイフと竹ヘラを目の前に突き出してウリボーが尋ねる。
 俺は竹ヘラを手にとった。竹の方が安全で使い易そうな気がした。ナイフだとなんだか感電しそうな感じがするからだ。電気とは全く関係ないことくらいわかっているが、もしも、ってなことを考えてしまうからだ。
「僕達がバリヤーを剥がすからダメ男は変な物を早く剥がして」
 やっぱりウリボーは変な物を一秒でも早く除去して欲しいのだ。いったい変な物の影響って何なのだ。悪い神様の思念がどのようなものか分からないけれど、ウリボーたちにとっては天敵のような存在ではないだろうか。だから早く始末したいらしい。
 イカたちがバリヤーを囲んで足に携えているナイフやヘラで突き立てたり側面から突っ込もうと頑張っている。
 俺はイカたちが奮闘している隙にタールをこそげ落とそうと考えた。思ったとおりだ。変な物はイカの作業に気を取られバリヤーは柔らかなものに変化していた。竹ヘラをタール状のものに垂直に突き刺すことにした。
 エイッ。
 刀の切っ先の形の竹ヘラがバリヤーを突き抜けタールのような変な物を刺した。
 その瞬間丸い穴の中に勢いよく海水が吸い込まれているのか、渦が巻き起こった。しまった。俺もそのまま穴に吸い込まれ、船底の中に入ってしまうことになった。
 真っ暗だが海水は船底全体を満たしてはいないようだ。息もできる。船底は大きな空間になっていて海水で満たすにはまだ時間がありそうだ。しかし、このままではいずれは窒息死が待っているだけだ。船底の状況が変ったからもう水中で呼吸はできないと思う。タール状の変な物も底から離れたようだが、どこに行ったか分からない。このままじゃ船底の穴から抜け出ても水圧と酸素不足で死んでしまうだろう。どうすればいいのだ。
 とにかく脱出することだが、どこかに上へ出る扉があるのか分からない。浮きながら船底の天井に手を触れて探すが、見つけることが出来ない。もう少し経てば本当に溺れ死んでしまう。
「ウリボー、早く明かりを持ってきてくれ。早く脱出しなきゃ死んでしまう」
 俺は思いっきり叫んだ。辺りが明るくなった。イカの足の先にライトが光っている。まるで目があるかのようにうまく船底を照らしてくれた。あった。上への出口だ。急いで真下に泳いで行き扉を上へ突き上げた。びくともしない。もう一度ウリボーに頼もう。
「ウリボー、この扉を開けてくれ」
「もう、ダメ男はイカに頼り過ぎだよ。もう少し考え、いろいろ試した後で呼んでくれたらいいのに」
 ぶつぶつ言いながらもウリボーは足を器用に操り天窓のような扉を開けた。いや、壊してしまった。強烈な光が差し込んできた。暗い船底にいたので目が潰れてしまいそうな感じになった。
 明るさに慣れるため、少しの間、目を瞑ってからゆっくり目を開け、両手を伸ばして懸垂の要領で体を持ち上げ船底を脱出した。
 上がってみて俺は目ん玉が飛び出て落ちるくらいにビックリした。SF映画に登場する宇宙船にあるような部屋がズラリと並び、帆船の中だということさえ忘れてしまう。
 ?
 納得が行かない。こんな未来感覚の部屋を持つ帆船がイカに引きずられ右往左往しているなんて、俺みたいな人間には信じることはできない。なんだか騙されている感じだ。
「騙されてなんかいないよ。神様の揺りかごはずっと昔からこんな風だよ」
 ウリボーが言った。なんだか嬉しそうな感じが伝わってくる。
 ここが神様の揺りかごだなんて、イデレブラや麗奈婆さん、それにイッチャンなんかの古代のコスチュームを見慣れてる俺にとっては全く場違いな感じだ。

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