隠し神 第3部 No.11

画像「ウリボー、ウリボー、ウリボー」
 叫んでみても何も返ってこない。舵の前にある小さな窓から前方を見た。ウリボーが足を振り上げて何か叫んでいる。神様たちはどこかへ消えてしまった。俺の他にはウリボーーだけだ。デッキに出てウルトラマンのように飛び上がり、ウリボーを目指した。ウリボーもこっちへ急いで近づいてきた。
 ウリボーは俺を捕まえて嬉しそうにまた振り回したが、すぐに海に潜りこんだ。水中では人間は息が出来ない。仕方なく口を閉じ、歯をくいしばった。凄い早さで潜っていく。もう水圧に耐えられない。どうしよう、と思ったとたん、ウリボーが言った。
「口を開けても大丈夫だよ」

 随分潜ったような気がする。言われた通り口を開けた。息を止めていたので思いきり深呼吸した。海水は入っては来ない。息苦しくもない。それに水圧も感じない。
「面白いよね。これが奇ッ怪島の不思議なところなんだ。あそこに穴が開いているのが見えるかい。その横にタールのようなものがへばりついているんだけど、あれが変な物なんだ、ダメ男は何だか分かるかい」
 ウリボーが奇ッ怪島の底を見上げて言う。俺も見上げて船底を見た。なんだ、このゴツゴツは。フジツボが大きな岩のように成長してくっついている。航行するには全く向いていない船底だ。そこの一部がきれいに剥ぎ取られて真ん丸い穴が開いている。直径一メートルくらいはあるだろう。
「ウリボー、これじゃこのままでも海水が入るじゃないか。引き回せば尚更だ。神様もそこのところを疑問に思っていたよ」
「ダメ男はおかしなことを言うね。今、ダメ男は海の中にいるんだよ。普通だったら呼吸ができないところだよ。それでもできるのが奇ッ怪島の下なんだ。だけど変な物がこのまま大きくなり、穴も大きくなれば海水が入ってくるんだ。分かるね」
 また先生みたいな物言いだけど、自分が島の下で息をしていること自体がウリボーの言ってることに嘘はないことを証明している。
「さっきも神様に話したけど、全く信じてもらえないんだ。それに今は誰もこの奇ッ怪島にいないみたいだ。ウリボーは海のことならなんでも知っているんだろ。教えて欲しいんだ。頼むよ」
「だからあの変な物を早くどうにかしなければならないんだ。ダメ男一人でだよ。神様達はどこか一所に閉じこもっているよ。みんなだるそうにしていたから早くしなきゃならないよ。まず変な物を取り除くことから始めるべきだね」
 やっぱり先生みたいに話すウリボーだ。仕方ない。とりあえずあのタールのような変な物を剥がさなければどうにもならない、ってことなのだ。
 ウリボーが見守る中、俺は船底の変な物に近づこうとした。手が届きそうな所まで来たが、そこからはバリヤーのようなものがあるのか、遮られて進むことができない。
「ウリボー、あの変な物は素手で触っても大丈夫なのか?」
 俺は忘れていた。悪い神の思念が変な物になったのだから、簡単には剥がせないし、人間が触ることなんて無理なのではないかと。
「ダメ男なら大丈夫だと思う。この前に戦った悪い神の破片も含まれているはずだけど、やっつけた神だから、今度もうまくいくはずだよ」
 ヘルヘイトの思念も含まれているのか。それじゃ触れない。あの時は元締が手助けをしてくれた。
「俺が一人でやっつけた訳じゃないんだ。元締がやっつけたようなものだから、無理だ。元締にやってもらった方が早い」
「それこそ無理だよ。みんな避難しているんだ」
「洋子も一緒なのか」
「島には誰もいないから、みんな一緒だと思うよ。さ、まずあの変な物を剥がしてよ」
 ウリボーは俺に早く変な物を取り除いてほしいようだ。変な物は神様たちだけでなく、イカたちにも何らかの影響を与えているのかも知れない。
 ここへ来る前に言ってた通りに物語は展開しているようだが、神様と洋子の避難場所は奇ッ怪島にあるはずだ。いや、必ずある。何故だかは知らないが、洋子もイデレブラも麗奈さん、それにイッチャンやヨッチャンまで島から離れるなんてことはあり得ない。瞬間移動が出来ない島で、ここから離れるには、俺が来た時みたいに空中浮遊して移動するしか手はない。全員が浮遊したなら、いくら呑気な俺でも気づかない訳はない。ウリボーにも分かってるはずだけど、イカの世界では変な物を今すぐにでも除去しなければならない理由があるのだろう。

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