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zoom RSS 隠し神 52

<<   作成日時 : 2018/05/22 08:51   >>

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画像 それにしても三神と洋子は仲が良い。俺がこの椎の実島にいることを知って、全員で来るんだから。プレゼンの仕事も俺の分を仕上げなければならないし、企画会社も忙しいはずだ。洋子がいなければ会社の機能が滞ってしまう。電話もかかってくる。いつもどう対処しているか不思議だ。
「大丈夫よ、心配しないで。緊急な用事があればお爺ちゃんに送ってもらうから。今日はこの島の人達と盛り上がる予定なの」
 イデレブラの影響を受け過ぎの洋子。と言うより、完全に神様一家の一員になってしまった。まだまだ若いのに、変わってる。
「変わってるのはお互い様でしょ。あなたも一般の人達からすれば随分変人の部類よ。そんなことより皆さんにどんな魔術を見せましょうか」
 こんな内輪の話をしていたら、組合に集まっている多くの漁師たちからてんでに歓声が上がった。みんな港を見ている。俺は何が起ったのか知りたくて、屈強な漁師をかき分けて窓の側で外を見た。灯台を過ぎ、もうすぐ第三藤丸が桟橋に着くところだ。イッチャンが手を振っている。どういう訳だ。
「ダメ男が勇太君に言っただろうが。華子が何とかするって」
 風呂で話していたことまで聞いていた。構やしないが、子供が船を引き上げ、そして操船し帰港するなんて、メチャメチャだ。
 船首の下を見ると大きな凹みがある。穴は空いてないが、衝撃でバランスを失い沈んだみたいだ。
「ありがとうございます。先生がおっしゃった通りですね。後は無線機と魚探を変えれば仕事はすぐにでもできそうです。良かったです」
 勇太は嬉しかった。顔をくしゃくしゃにして泣きながら俺に礼を言った。鬚爺さんとその息子がやったことだが、感謝されるのは悪くない。役得みたいなものだ。
 こんなことがあって漁り火での快気祝いパーティーは盛大なものになった。漁師の殆どが手に手に食べ物や酒を持ってやってきた。その家族も参加したので、島中の住人が集まる格好となり、体育館は超満員となった。
 主役は勇太と土屋君、そして何故か俺だった。船を運んだイッチャンも主役の一人として壇上に上げられたが、すぐに同い年くらいの子供たちと走り回って遊んでいた。
 宴もたけなわの頃、勇太がお礼のあいさつをし、その後魔術を見せることとなった。
 魔術スペシャルの時と同じように俺が空中浮遊を見せると、子供達がダメ男。ダメ男と囃し立てた。大人達はさすがにダメ男と呼び捨てにはできないので、手拍子で盛り上げるのだった。
 パーティーはまだまだ続いた。イッチャンが自分の仕事である隠し神の本領を発揮し、漁船から様々なものを瞬時に持ってきた。家族写真なんかは序の口で、奥さんの目を盗んで貯めたヘソクリまで持ってくる始末だ。バレた漁師を奥さんがとっちめ夫婦喧嘩のはじまりとなったが、みんなは周りでヤジを飛ばし、喧嘩があっちこっちに飛び火した。
 夜もふけ、さすがに疲れたのか、三々五々漁師達は家路につくのだった。
 魔術師一団の俺たちも民宿に帰ろうとしたが、華子と勇太が自分の家に泊まってくれと言うので、その言葉に甘えることにした。

 勇太と華子の家は小さいながらも都会的センス溢れる内装になっていた。
 勇太が高校二年生で華子が中学三年生の時だった。両親が海で遭難し亡くしたが、島の人達の協力で高校を卒業することができた。そのお返しに兄の勇太は現在の組合長の船に乗ることになった。十三年経ってようやく自分の船を持つことが出来たが、船名は組合長の二隻の船にあやかって第三藤丸にした。
 華子も高校卒業後働きながら大学の二部で頑張った。そしてテレビ局のアシスタント募集に応募して合格した。その後のことはみんなの知るところだ。こんなに良い田舎があるんだったら、あの時、ここへ戻っていればよかったのだ。事件に巻き込まれることもなかった。しかしこの家をリフォームするために華子がお金を出したことくらい想像がつく。テレビ時代の華子は仮の姿で、いま爺さんのところで働いている華子が真実の姿なのだろう。それぞれ人の奥に潜むほんとうの心は他人には理解できないし、ひょっとしたら本人にも分かっていない場合が多いのではないだろうか。そんなことを思いながらまた兄妹と酒を酌み交わすのだった。

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