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zoom RSS 隠し神 51

<<   作成日時 : 2018/05/15 09:07   >>

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画像 ウワァー
 事務所の人達は大きな音と共に遭難した伊藤と俺がズブ濡れで降ってきたことにブッたまげたようだ。
「おい、大丈夫か。どうしてここへやってきたんだ」
「そんなの後で聞け。濡れたものを脱いで早く身体を暖めろ」
 組合長が強く言った。
 風呂にゆっくり入り、身体を暖めながら伊藤勇太の頭部を見た。左の頭頂斜め上に一本の筋が入っている。たぶん当った弾は頭蓋骨を抉り、仲間の土屋の肩あたりをかすめたのだろう。もう少し深ければ致命傷になっていたかも知れない。弾が当った時はどんな感じがしたのだろうか。
「傷はもう治ったのかい」
「ええ。でもこんなスジが頭に入ってしまいました。鎌イタチって怖いですね。あ、お礼を言うのを忘れてました。ありがとうございました」
 勇太は俺のことを知っていて話をしているみたいだけど、海から瞬間移動したことに驚かない。どうしてだ。テレビの魔術スペシャルを見ていたとしても、実際に体験するとなると別だ。弾が当った時、別の何かを知ったのだ。俺が瞬間移動している時に見るあの光景と同じような現象を体験しているに違いない。
「鎌イタチに遭遇した時、別の何か起ったんはずなんです。話してくれませんか勇太君」
「いえ、何もありませんよ」
「そんなはずはない。そうじゃないと僕が突然海の中に現れたことや、瞬間移動したことに動転するはだ。普通の人間であればね」
「お見通しなんですね、大先生は」
 俺が他言しないという約束で勇太はあの時の出来事を話してくれた。
「鎌イタチにやられる前、みんなで魔術スペシャルを見ていたんです。妹がプロデュースしてるのを知ってましたから。何故だかしら無いけど、終わりかけに何かが起ると感じました。それから銃を発射したところまで見ていました。その瞬間『来る』と思いました。何が来るのかは分かりませんでしたけど。そして後頭部から前の方に痛みがジワジワ進むにつれ、不思議な光景が現れたんです。病院のベッドで寝ているところから、退院をして船で漁をしているところまで見えたんです。それから今日のことですけど、今朝、漁に出る前、家から港へ歩いている時、目の前に不思議な光景が現れたんです。船が座礁し、海に浮かんでる自分がすぐに助けられ、組合の風呂に浸かってるところだったんです。今のことが朝に分かっていたので、大先生が来た時、やっぱりだ、と思いました」
 勇太には予知能力が備わりつつあるようだが、今は危険回避に関してのことだけに留まっている。少しばかりの予知能力なんて勘の鋭い人間なら誰でも持っている。鬚爺さんに報告するほどのことでもないだろう。
「良かったじゃないか。助かると信じていたからこそ湯に浸かっていられるんだ」
「そう簡単ではないですよ。明日から漁ができないんですから。船は沈んでしまったんです。新しいのを買うにしても元手がかかりますから」
 いくら小さな漁船でも数百万円はかかる。保険に入っていても買うことはできない。
「そう心配しなくてもいいよ。妹さんがなんとかしてくれる。大丈夫だ。もうすぐ君の快気パーティーだ。元気を出せ」
 俺は適当なことを言って勇太を励ましのではない。華子に鼻の下を伸ばすイデレブラだから勇太の船を調達することに俺は確信を持って言ったまでだ。
 そうだ弾の件が解決したのだから、これで事件の全容が解明できた。みんな呼び寄せて楽しもう。鬚爺さんは特に嬉しがるだろう。
「勝手なことを言うな。儂らはダメ男が海で震えておる時にもうここに来ておった。まだまだ修行が足りんのう」
「不用意でしたね、あなた。救出に行く時、お爺ちゃんのことを思い浮かべたでしょ。だから何処にいるかばれてしまったの。それでみんなで来たわけよ」
「ダメ男君は、やっぱり嘘はつけないってことね。ほんと良い人だわ」
 麗奈婆さんも一緒だが、イッチャンがいない。こんな時は喜んで来るはずだが。
「残念でした。ちゃんと来てるよ。華子お姉ちゃんと宴会の準備をしてるんだ。島の人達にも本当の大魔術を見てもらおうと思って」
 考え方も行動も親と同じだ。女性好きも親の遺伝子を受け継いでいる。神様にもそんなものがあったとしてだが。

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