身勝手小説の部屋

アクセスカウンタ

zoom RSS 隠し神15

<<   作成日時 : 2017/09/05 08:57   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像 俺はイッチャンがどのようにして女社長を元に戻したかを知りたかったが、それは神様のすることだから、まあ関係ないことだし、聞かないでおくことにした。しかしキャップの件については問いつめなければならない。さんざん嘘ばかり俺に言ってたからだ。
「クソガキ、また隠し事をして、嘘をついただろ。本当の事を言え」
「そんなの知ったって嫌な気分を味わうだけだよ」
 イッチャンはフルーツアラモードに長いスプーンを突っ込み、かき混ぜて遊んでいる。
「神様のくせに嘘をつくな。俺はウソつきが一番嫌いなんだ。よく嘘も方便なんて言うけれど、嘘をつくぐらいなら最初から言わなければいい」
「だけど嘘をつかれても、その嘘が幸せを運んでくることだってあるよ」
「言うじゃないか小僧。とにかく俺はウソが嫌いなんだ」
「だけどさっき、仕事を持って行った時、あの担当者に嘘を言ったでしょ。あれはどうなの?」
 俺の考えが曖昧で矛盾しているところを鋭く突いてくるガキだ。脱帽するしかない。それでも女社長に言った、あのこと、が何であるのか知りたい。
「じゃ、教えてあげるね。あの三人はキャップの中に薬の粉を入れて鼻から吸っていたんだ。わかるでしょ」
 そうか、三人で法律で禁じられている薬物を吸引していたんだ。薬品の卸会社なんだから、サンプルなんかも一杯あるはずだし。
「一番多く吸ったのが旦那だった訳か。それで俺の記憶の影響と相まって、おかしな風になったってことか」
 イッチャンはうなずいた。
 違法なことをしてたわけだから、イッチャンの言うことに従うしか手立てが無かった、っていうことだ。これが公になれが吸っていた三人が逮捕されることはもちろんだが、会社だって無くなってしまう。
「だから、もうあの三人は絶対に薬には手を出さないから心配しなくていいよ。あのおっちゃんが身を持って体験したんだから」
 真相が分かってホッとしたら、お腹が鳴った。それで俺は思い出した。まだ昼食を食べてなかったことに。
 そんな俺達を見ていたあのウェイトレスがつかつかとテーブルへやってきてニッコリ笑いながら「何になさいます」と尋ねた。お腹が鳴った音でも聞こえたのだろうか。スパゲティを注文すると「お坊っちゃんは?」と笑顔で言う。イッチャンはお子様ランチを注文したが、喫茶店だからメニューにあるはずがない。それでも「かしこまりました」と丁寧に言い、静かに席を去る。

 お子様ランチとスパゲティを運んできたウェイトレスは、そのまま何か言いたそうな顔をして突っ立っている。
「お姉ちゃんどうしたの?」
「あのぉ、サインお願いできますか」
 どういうことだ。イッチャンのサインなのか、それとも俺のなのか。ヘンなことを言うウェイトレスだ。俺は理由を聞いてみた。
「社長さんが言ってたんです。イッチャンとダメ男さんはもうすぐ有名人になると。今サインを貰っておけばいいよ、ってね」
 どういうことだ。俺はもとよりイッチャンだってそんなことは言ってない。女社長がどうしてでまかせを言ったのだろう。
 銀のトレイの下から色紙を差し出し、胸のポケットからサインペンを抜いたウェイトレスはどうしたらいいのか困惑した顔をしている。するとイッチャンが色紙を受け取り、素早くペンを動かした。文字だか絵だかわからないものが書かれた。仕方なく俺も名前を書こうとしたが、田中と名札を付けたウェイトレスが『ダメ男さん』と言ったので、どうすればいいか迷ってしまった。俺には親からもらった名前があるのだから。
「そのままお姉ちゃんが言ったとおり書けば……」
 イッチャンは勝手なことを言う。あまり待たすのも悪いので、俺は芸能人がするように陀目雄と当て字でサインを素早く書いて渡した。
「ありがとうございます」
 トレイを脇に挟んで両手で受け取り、頭を下げたウェイトレスはにこやかな顔をして席を離れた。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
隠し神15 身勝手小説の部屋/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる