身勝手小説の部屋

アクセスカウンタ

zoom RSS 隠し神 16

<<   作成日時 : 2017/09/12 09:06   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像「イッチャン、女社長に何をしたんだ。またおかしなことが起きているではないか。俺とイッチャンが有名人になるなんてこと、そんなの馬鹿げてるし、なりたくもない」
 イッチャンは何も言わずにお子様ランチをもくもくと食べている。
 食べながらイッチャンは考えていた。もう女社長らのことは確実に終わったはずだと。それなのに予言めいたことをウェイトレスに話した。やっぱり薬の影響で神経が敏感になり、未来を見ることができたのだろうか。いや、違う。女社長とコンタクトした時に父ちゃんや麗奈姉ちゃんと話していた記憶の一部が流出したんだ。まだまだ父ちゃんのようにうまく制御することができない。ま、今のところは大丈夫だと思うけど、これからダメ男がどのように変貌するか、楽しみでもあり、少し不安でもある。
「食べてばかりいないで、何とか言えよ。俺は有名人なんかにはなりたくない」
「ダメ男兄ちゃん。もう少し贅沢をしたいんだろ。ちょっとくらい名を知られなくちゃお金は儲からないよ」
 大人びた言い方をするガキだが、言ってることは本当だから、よけいに頭に来る。名が売れれば売れるほど福沢諭吉が束になって後を追いかけてくるのがこの世の常。ある程度は仕方ないけれど、ウェイトレスが言ったことが実現するなど、実際には不可能に近い確率だと思っている。けれども、宝くじは買わなければ絶対に当らないのと同じで、イッチャンという神様と知り合いになれたことにより、俺の人生に一つでも良いことが起ればラッキーだ。
「一つはすでに叶っているでしょ。これくらいじゃ贅沢な暮らしはできないよ」
「いや、イッチャンが協力してくれて週に三本くらいプレゼンを作れば、週に二回は飲みに行くことができるよ。それに少しくらい貯えもできるしね」
 本当に欲のないダメ男だとイッチャンは呆れている。二千五百年前の大哲学者であり宗教家も、そして二千年前の神様も、日々生きるための糧は用意されていた。ダメ男もこのままの形でいたら食うには困らないが、哲学者や神様みたいに多くの人達から慕われる存在にはならない。人間は他の動物と違っている所は自己主張を行い多くのファンを作る能力を持っていることだとイッチャンは思っている。動物は群れて行動することがあるが、それは自分の身を守るためであり、家族を守るためである。命に関係ないことで集う動物は人間だけである。それが小さいながらも二百年以上生きてきたイッチャンの結論だ。
「あのおばさんがウェイトレスに耳打ちしたことは、嘘ではないよ。ダメ男兄ちゃんは有名になりそうだよ。どの分野でかはまだ分からないけどね。さ、仕事を早く済まそうよ」
 さっさと席を立って出て行くイッチャン。おれは財布からお金を出しながら『勝手なヤツだ』と胸の中で思った。
「おいくらですか?」と五千円札を出すと、「社長さんから頂いております。お仕事頑張ってください」とにこやかに言う。俺は女社長によろしく伝えてくれるように言って喫茶店を出た。
 イッチャンがいない。興味を惹くものでも見つけたのだろうか。通りを見渡してもいない。ひょっとしたら十階のあの会社へ一人で行ったのかもしれない。女社長が言った言葉が気になっていたので確かめに行ったのではないだろうか。さりとて俺までもが行くわけにはいかない。神様だから勝手に帰ってくるにちがいないと思い、放っておいて帰ることにした。
 アパートに帰り着いた俺は、さすがに疲れていた。朝から色んなことが起こりすぎで、頭も体も疲れ切っている。そのままうとうとしていたらテレビの音が聞こえてきた。イッチャンが帰ってきたのだろう。もう少し寝ていてやれ。俺はイッチャンを無視した。
「ダメ男兄ちゃん、起きてよ。もうすぐ僕がテレビで紹介されるんだから」
 俺は飛び起きた。眠気も吹っ飛んだ。ローカルニュースが始まった。大きな交通事故や強盗事件を伝えた後に、イッチャンがアップで映し出された。
『二十一世紀の現代に古代人が蘇りました。大黒様のようなスタイルで、さかんに愛嬌をふりまきながら公園を走り回っているあの子供です。可愛いですね。三歳くらいでしょうか。あ、若いお嬢さんが抱き上げています。ホッペにキスをしてまた駆けて行きました。すべり台の後ろにいるのでしょうか。出てきません。かくれんぼでしょうか。ちょっと近づいてみましょう』

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
隠し神 16 身勝手小説の部屋/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる