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zoom RSS 隠し神 12

<<   作成日時 : 2017/08/15 08:53   >>

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「麗奈さんよ。どうする?。このままじゃとダメ男が動くたびに世の中があらぬ方向に進んでいくようじゃ」
「今のところはあの三人、特に旦那に影響が出ているだけですが、中途半端なダメ男の行動によっては世界を変えてしまうかも知れません。ダメ男はただの人間ではなさそうですね。ひょっとしたら二千年ほど前のあの人物の再来かもしれませんよ」
「それは父ちゃんが若い時にいたずらした人のことだろ。姉ちゃん、そうだよね」
 イッチャンが言う約二千年前の人物とは、ある意味では世界中で最も知られる人物、いや神であるかも知れない。その名前を隠し神は明かすことはできない。神は神により創造されるのであり、決して人間が自ら神になることなんて、とうてい無理なのである。神により神が創られたとなると、崇められるその神よりもっと位の高い神に人間の心は移ってしまう。だからその神の名を明かすことは神の世界ではもっとも重大な罪であることをイッチャンのような子供でも知っている。
「ダメ男を神にすることはできないぞ。今の世の中には神と称する輩が多すぎる。それで一儲けする奴ばかりだ。ダメ男もそんな気持ちでいることは確かだが、まだ人間の本当の醜さを知らないのが唯一の救いだ。麗奈さんが小さい時、そう二千五百年ほど前に神にしようとした人物のようになってくれるのであれば良いが」
「それってあの王子様のこと?」
「そうだ。儂はあの王子が神になってくれたら一番良かったと今でも思っておる。しかし王子は神になることを拒んだ。崇め、崇められることでは本当の人間の進歩はないと考えたからだ。王子の意志を引き継いだ人間も数多排出したが、現在に至っては、もう功利主義に甘んじているだけである。王子の哲学を継承し、実践している人間なんて消え失せてしまった」
「もう一人いたでしょ。砂漠の国に」
 イッチャンが尋ねた。でもイデレブラも麗奈もそのことには触れようとしない。
「教えてよ」
「イッチャンにはまだ正しく理解することはできないからダメなの。私だって詳しいことは知らないのよ」
「儂ら神族の中にも派閥があるんじゃ。だからお互い、そのことには触れないようにしておる。だがな、あの砂漠の男は神ではないからな。儂らが創った神とは違うことを忘れるでないぞ」
 イッチャンは教えてもらえないので膨れっ面をしている。
「そう膨れるな。儂らは人間が少しでも幸せになることを願っておる。それは生きていてこそであり、死後の世界のことではないぞ」
 イッチャンは子供であるが、イデレブラの言葉でおおよその見当をつけた。
 戦争で、お国のために散る、なんてことは神からすれば馬鹿げた行為なのである。モノを隠すのも生き物がより幸せを謳歌するための一つであるのだから。そのためのいたずらであり、ずっとずっと困らせるためのものではないことを。
「儂らが創った神のことなんて、今はどうでもよい。早急にダメ男を元に戻さなければならない。これはどうもイッチャンの仕事になりそうだな」
「どうして僕なの?」
「儂も麗奈さんもおまえと同じような歳頃に神や神に近い存在の人間を誕生させた。おまえもそんな歳になったってことさ。渾沌とした今の世の中、人々を導く神や哲学者なんて誰も必要としていないが、なにかホンワカとした気持ちになれる人間を出現させてもいいのではないか」
 イッチャンはいたずらは好きだが、ダメ男をホンワカとしていて他の人間から慕われる存在にするなんて、無理だと思った。
「無理ではないですよ。すでにイッチャンはダメ男を動かしてるではありませんか。のほほんとして、ちょっとの贅沢だけを望んでるから良いのです。ダメ男には、いまのところ金銭欲や名誉欲なんてのは持ち合わせていないのですよ。アルバイトのお金も請求しないで出て行ったのですから。もうすぐ伯父様の出番ですよ」
 麗奈婆さんがそう言った時、ダメ男がイデレブラを呼ぶ声が聞こえた。
「報酬だけでも渡してやろう。その後はおまえがダメ男の担当だ」
 鬚爺イめ、トンズラしやがって。早く出て来い。
 何度も心の中で毒づいていると、机の引き出しがガタガタ音をたてた。ダメ男は笑いたいのを堪え、ずっと様子を見ている。開けることができなければ別の場所から出てきたらいいのに、と思った。この引き出しを開けるにはちょっとしたコツがある。鬚爺さんは四苦八苦しているようだ。
 ガタガタ、ギーギー。まだ孤軍奮闘しているようだ。
「おい、ダメ男。何を笑っとる。儂はここじゃ」
 本棚から顔だけ出ているので、今度もダメ男は腰を抜かしそうになった。
 それでもまだ引き出しがガタガタと音をたてている。

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