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zoom RSS 華(ハナ)8回目

<<   作成日時 : 2017/03/07 08:49   >>

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 お昼を過ぎたころ、雲が取れて空は真っ青になりました。いつものように井戸の冷たい水を飲み、おやつを食べて少しのあいだ、タマちゃんとお堀を見ていました。雨のせいで水かさが増えていますが、水面は鏡のようで青い空とお堀の柳の木を映しています。今日は観光のお船はお休みみたいです。
 あ、何かが跳ねながらこっちへやってきます。ぺーちゃんです。トカゲのぺーちゃんがお迎えにきたのです。それにしてもおかしな泳ぎ方です。カエルが飛び跳ねているようです。私達が来るのが待ち遠しかったのでしょうか。
「早くおいでよ。いまならタマちゃんも心配しないで渡ることができるじゃないか」
 ぺーちゃんがせかすので、私は水の中に入りました。そしてタマちゃんが私の背中に飛び乗りました。ぺーちゃんもちゃっかりタマちゃんの後ろに乗っています。ゆっくりと泳いでいるとチーちゃんが「ガンバレ、ガンバレ」と飛びながら応援します。
 お堀の中程にさしかかりました。突然チーちゃんが「はやく泳いで、はやく泳いで」と叫ぶのです。私は周りを見ました。小さな波が立っています。何かがやってくるのです。
 「はやく、はやく」と声を張り上げるチーちゃんです。
 背中に乗ってるタマちゃんも言いました。
「ヘビだよ。大きなヘビが来るよ。どうしよう。もうすぐ追いつくよ。ハナちゃん、はやく泳いで」
 どうしよう。タマちゃんを落としたらたいへんです。揺らさないようにして速く泳ぐことはできません。
「はやく泳いで。落ちないようにしがみついてるからはやく泳いで。あ、ヘビが口を開けたよ。食べられちゃうよ。はやく、はやく」
 私は力一杯足を動かしました。するとどうでしょう。いつもお堀端をかけッこしてるくらいの速さで泳ぐことができたのです。もうヘビは追いつくことはできません。
「やっぱりハナちゃんはすごいよ。あんな大きなヘビから逃げることができたんだから」
 チーちゃんは低く飛んだり高く飛んだりしてうれしさを小さい体いっぱいであらわしています。
 やっと着きました。白壁の土蔵の前でひと休みです。私は精一杯泳いだので、少しの間動きたくありません。タマちゃんとぺーちゃんは何事もなかったかのようにお話をしています。チーちゃんは私の頭に止まり、何か考えているようです。あのはしゃいでいた姿はどこへ行ったのでしょうか。
 しばらくするとチーちゃんは小さな声で私に話しかけました。
「母さんが私を捨てたんじゃなかったんだ。あのヘビに食べられそうになって、私を落としたの」と言った。
 チーちゃんは私達がお堀を渡ってるのを上から見ていて、あのヘビを見つけました。その時、いままで忘れていた小さいときの出来事が蘇ったのです。
「あのとき母さんは私に餌を食べさせてくれてたの。私のおうちは外からは見えないけれど、中からも外が見えにくいの。あのヘビが木の枝を這ってやってきたのが母さんには分からなかったのよ。さっきみたいに大きく口を開けて私達を食べようとしていたときに母さんはようやく気がついたのね。それで咄嗟に私をくわえて下に落としたに違いないわ。そのとき母さんはヘビに食べられてしまったのよ」

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