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zoom RSS 華(ハナ)9回目

<<   作成日時 : 2017/03/14 09:54   >>

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画像 チーちゃんは涙ぐんでいました。捨てスズメでないことがわかったのは嬉しいことですが、チーちゃんを守るために巣から落とした母さんが食べられてしまったことが悲しかったのです。
「チーちゃん、元気出すんだよ。食べられてしまった母さんは可哀想だけど、チーちゃんが元気で明るく生きていくのを楽しみにしていたんだから」
 慰めにはならないことですが、チーちゃんにこう言うよりほかの言葉が浮かばなかったのです。
「ハナちゃんは優しいね。チーは気にしてないから。仲間の母さんもヘビに食べられたんだよ。自分だけ悲しんでいても仕方ないよ。ハナちゃんもタマちゃんも母さんがどこにいるか分からないんだもの。チーと同じだよ」
 チーちゃんは元気を取り戻しました。私もヘビに追われて一所懸命泳いだ疲れが快復してきました。
「ぺーちゃん、タマちゃん、そろそろ白壁の土蔵の向こうを探検しよう」
 私はぺーちゃんとタマちゃんの方を見ました。あ、いない。チーちゃんとお話してるあいだに何処かへ行ったのでしょうか。チーちゃんと土蔵の周りを探すことにしました。
「チーちゃん、いないね」
「上から見てもいないよ。表側にもいない」
「その向こうはどうなってるの?」
「何も見えないよ。この土蔵には表側はないよ。薄っぺらな建物だよ」
 チーちゃんが言ってることが私には分かりませんでした。人間の知恵を集めた本がいっぱいあるはずです。私も表側へ行くことにしました。ありません。入り口もありません。チーちゃんが言うとおりです。その向こうは何も見えません。
「おかしいよ。ぺーちゃんの話していたことは嘘だったのかな」
「わかんない。こっち側には何もないんだから、お堀の側をさがしてみようよ」
「チーちゃん。僕の頭に乗っかっていいよ。はぐれたら困るもの」 
 私はチーちゃんを頭に乗せ、お堀側の木が植わってるところや建物の間を見て回りましたが、どこにもタマちゃんとぺーちゃんはいません。もう白壁の土蔵からずいぶん離れています。
「何も見えない向こうを調べるしかないよ」
「そうだね。怖くなったらすぐにお堀を渡って帰るんだよ。それでね、サリーちゃんやハヤテちゃんに知らせるんだ」
 建物と建物の間は私が通れるくらいしか隙間がありません。ちょっと左右に当りながら歩くと、すぐに表に出ました。ここもやっぱり薄っぺらな建物でした。その向こうはやっぱり何も見えません。私は何がなんだかわけがわからなくなりました。何も見えない向こうに行くしかありません。チーちゃんを帰した方がよさそうです。
「チーも行く。ここまで来たんだから、タマちゃんを見つけるの」
 タマちゃんはチーちゃんの母さんと同じなんです。そんなタマちゃんがどこかへ消えてしまったんだから、心配で心配でたまらないのでしょう。
「じゃ、行くよ。しっかりつかまってるんだよ」
 何も見えないところですから、何が起こるかわかりません。私はゆっくりゆっくり前へ進みました。プニュッと何かが鼻先に当りました。するとフワーッと良い香りが漂いはじめたのです。
「ぺーちゃんが言ってたにおいじゃないよ。このにおいならチーも好き」
 この匂いを嗅いでからは怖さが無くなり、さっきより速く歩く勇気が出てきました。相変わらず周りは何も見えませんが、色が変ってきたように感じます。
「ハナちゃん、水色になったね。もうすぐ霧が晴れるみたいに、全部見えるようになるんだよ。あとちょっとだよね」
 チーちゃんの言う通り、水色の霧のようなものは薄くなりました。そして晴れました。そこには私が見たことがある風景がありました。御主人様がタマちゃんと一緒にピクニックに連れてってくれた山だったのです。
「タマちゃーん、タマちゃーん」
 チーちゃんは大きな声で呼びかけるのですが、こだまが返ってくるだけです。

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