身勝手小説の部屋

アクセスカウンタ

zoom RSS 華(ハナ)7回目

<<   作成日時 : 2017/02/28 08:50   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

画像


 夕食をいただいたら眠くなりました。タマちゃんはいません。集会に出かけたのでしょう。私は縁に上がり、そのまま寝てしまいました。
 そのころタマちゃんはハヤテちゃんの裏庭にいました。タマちゃんが呼びかけた猫の集会です。
「タマちゃんがお堀を水に濡れないで渡るにはどうしたらいいのか、みんなで考えて欲しいんだって」
 ハヤテちゃんがみんなに尋ねました。集まった猫たちは、今までお堀を渡るなんてことを誰ひとり考えたこともなかったのです。
 みんなが首をかしげているので、タマちゃんがもう一つ尋ねようと思いました。
「お堀の向こうに見える白壁の土蔵の、その向こうには何があるの?」
「誰も向こうに行ったことがないので知りはせんが、わしのお爺が言うておった。あそこへ渡ると帰ってこれんようになる。じゃからお堀に入っても、向こう側へは渡ってはいけないとな」
 一番歳上のジイちゃんが言いました。ほかの猫たちもそんな言い伝えがあることを口々に話しました。
 またジイちゃんが言いました。
「本当はわしも渡りたいんじゃ。その勇気がありゃせん。タマが渡って話を聞かせておくれ。ハナも一緒なんだから大丈夫じゃ。頑張れよ。ハナの背中にしがみついておれば落ちることはない」
 ジイちゃんは歳上だけのことはある、とタマちゃんは思いました。そしてタマちゃんは猫の誰もが知らない世界へ行く決心がついたのです。

 空はどんよりと曇っています。この町ではこんな朝は珍しいことです。このところおだやかな天気が続いていたからなおさらです。
 小学生たちも、今日は頭を撫でるのもそこそこに学校へ急ぎます。観光客のおばさんの団体もおしゃべりをしないで通り過ぎて行きました。こんなの私がここでお堀を見るようになって一度あったきりです。たぶんもうすぐ雨が降り出すに違いありません。あの時も大雨が降ったことをいまでも覚えています。
 御主人様が私に縁側へ行くように言いました。小さな雨粒が落ちてきたからです。
 私が縁側へ行くとタマがちょこんと座り気持よさそうに寝ています。だんだん雨粒が大きくなってきました。タマの横で空を眺めていると光が走りました。雷です。大きな音がしました。タマはびっくりして目を醒ましました。
「ハナちゃん。向こうへ渡れないね」
「お散歩の時間には雨は止んでるよ」
「それじゃ、渡るのね」
「うん。タマちゃんは僕の背中に乗ればいいさ」
「うまくいくかな?」
「心配いらないよ。タマちゃんは強い子だから、お堀を渡るくらいへっちゃらだよ」
 雨が小降りになりました。チッチッチッと鳴きながらチーちゃんがやってきました。
「お散歩のあと、お堀をわたるんでしょ。私も行く」
「いっしょに行こう。ぺーちゃんも待ってるからね。みんなで白壁の土蔵の向こうを探検するんだ」
 チーちゃんは嬉しそうにお堀の柳の木へ戻りました。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
華(ハナ)7回目 身勝手小説の部屋/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる